スラバヤ

「ジャカルタですか。インドネシアならどうしても行ってみたい街があるんです。」

ある日受診された患者さんのご主人が出張で
ジャカルタに行っているという話を聞いた時のエピソード。

「”スラバヤ”という町です。ユーミンの歌に出てくる街なんですけど。」

自称、かなりのユーミンフリークだというその方が全く知らないとのこと。
初めてその曲を聴いた当時と違いなんでも調べられる今の時代、
これは本格的に調べてみようと思ったわけです。

発売は1981年。
「水の中のアジアへ」という4曲だけが収録されたミニアルバムに収録。
「スラバヤ」とはジャカルタから東へ800㎞、インドネシア第2の都市で
かつて戦争中は日本軍の拠点基地も置かれたことのあるところ。
一方、タイトルの「スラバヤ通り」はジャカルタ市内にある
オランダ統治時代の骨董品を扱うお土産屋さんが並ぶ通りでスラバヤ市内にあるわけではない。
歌詞の中にある「ラッサッサヤンゲ(RASA SAYANG GEH)」は
「かわいいね」「残念だね」「かわいそうだね」という意味でほぼ同名の童謡が現地で歌われている。

といったところでした。

初めてこの曲を聴いたのは高校1年生の時になります。
(調べる前はもっと前、中学生の時だったと間違えて記憶していました。)
当時松任谷由美さんは人気絶頂で色々なメディアで取り上げられていました。
あるFM局で紹介の後流れていたこの曲を録音し
綺麗なメロディーの曲だなあと何度も聞き直していた記憶があります。
しかし、この次に発売されたアルバム「昨晩お会いしましょう」が
あまりにも有名でメディアを席巻してしまい
ミニアルバムだったせいもあり「水の中のアジアへ」は
あまりメディアで取り上げられなくなってしまったこと、
その後録音したテープもどこかに行ってしまったことから
30年間くらいたまに思い出すことはあっても全く聞かずにおりました。

今回あらためてYouTubeで検索したところヒットしたので
早速30数年ぶりに聞いてみました。

ヘビーローテーションしていたので
前奏が始まった途端に当時の記憶にタイムスリップし
曲が終わるまで懐かしさで身動きできずに聞き入ってしまいました。
当時感じたきれいなメロディーだなあとあらためて思いながら。

歌詞に関しては日本の戦争が何か関係した内容なんだろうと漠然と思っていましたが
今回初めて詳しく調べてみてその意味やバックグラウンドを知った上で歌詞を聞いてみると
その綺麗なメロディーから得られる印象だけとはまた違って
当時ではまだ理解しきれなかっただろう複雑な事情を含んでいることがわかりました。
(参考にしてください;http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1433717.html。
日本人であるデヴィ夫人がスカルノ元大統領となぜ結婚できたのかがよく理解できました。)

今でこそ世界中どこの国にも簡単に旅行できますが、
少なくとも当時は政治的・経済的にアジア諸国に旅行に行くことは
今ほどは簡単ではなかったという印象があります。
そういった思いがこの歌を聞いた時に
どこか遠い手の届かない街を想像させて旅愁を掻き立ててくれたので
今でも深く印象に残っているのだろうと思います。

そういった意味では
お手軽にどこでも行けてしまう今の恵まれた時代、
決してだめなわけではありませんが
曲ひとつ聞いて憧れや旅愁を掻き立てらるような思いを簡単にできない状況は
今の若い人にとっては「かわいそうだね(RASA SAYANG GEH)」なのかもしれません。

余談ですが・・・
「水の中のアジアへ」のアルバムジャケット写真は
シンガポールの有名な「ラッフルズホテル」で撮られたとか。
1993年、医師になって2年目の夏にシンガポールに旅行に行ったのですが
とても高くて泊まれませんでした。
さすが松任谷さん、
今も当時もセレブのイメージが漂ってます。
「スラバヤ通りの妹へ」から受けるもう少し素朴な
ノスタルジーを感じさせるイメージとはおよそかけ離れていて
その事実を知った時にはいささかずっこけましたが。

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