昨日の外来でスタッフ共々度肝を抜かれたエピソードをひとつ。
そのご家族は中国から日本にいらしていて
1歳になるご長男さんが
風邪をひいたり予防接種を受けるときなどに
当院を受診されるといった具合でした。
お母様は妊娠されていて
8月に中国で里帰り出産される、と記憶していました。
ところが昨日の8月9日
ご長男さんが発熱したとのことで
そのお母様がお連れになって当院を受診されました。
「あれっ?ご帰国の予定ではなかったのですか?」
「はい、実家の父の健康状態が良くないので帰国しませんでした。」
「それは大変ですね。ではご出産は?」
「はい、もう生まれました。女の子です。」
「えっ?いつのことです?」
「はい、8月6日です。」
「ええ~っ!?」
ほかにお子さんを病院に連れて行ってくれる人も無く
やむを得ず生まれたばかりのお子さんを産院にあずけたまま
産後3日で当院にご長男を連れて御来院されたとのことです。
常識的にはありえないことです。
どんなにつらい状態だったことか。
母親の強い母性という愛情に打ちのめされてしまいました。
「もう絶対にこんな無理はしないで。
ご連絡いただければ往診するから。」
診察後そう伝えると
本当に申し訳なさそうに感謝されてお帰りになりました。
自分が遊びたいために
自身で生んだお子さんを家に閉じ込めて餓死させてみたり
自分のお子さんと同じ年代の他人のお子さんを抱く振りをして
そのお子さんの足を折ってみたりと
目を覆いたくなる様な母性のかけらも見当たらない母親のことが
連日ニュース報道されている中
自分の常識とは全く違う場面に遭遇し面食らいながらも
診察室の中のみんながしばらくの間
なんとなくお互いがやさしい雰囲気に包まれたのでした。
とても好きだった短歌を久しぶりに思い出しました;
我が母よ
死にたまひゆく我が母よ
我を生まし乳足らひし母よ
斉藤茂吉さんです。
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