「更年期の不調、できれば薬に頼らず食事で何とかしたい」
「大豆製品が体に良いとは聞くけれど、具体的にどう摂ればいいの?」
心と体のバランスが揺らぎやすい更年期。その不調を乗り切るために、日々の「食事」が味方になってくれることをご存知でしょうか。特に、古くから日本人の食生活を支えてきた「大豆」には、この時期の女性をサポートする素晴らしい力が秘められています。
この記事では、更年期症状の緩和に効果が期待される「大豆イソフラボン」と、その力を最大限に引き出す成分「エクオール」について解説します。
なぜ大豆が更年期の救世主になるの?「大豆イソフラボン」の働き
更年期症状の根本的な原因は、女性ホルモン「エストロゲン」の急激な減少にあります。大豆に含まれるポリフェノールの一種「大豆イソフラボン」は、このエストロゲンと化学構造が非常によく似ています。
そのため、体内でエストロゲンを受け取る「受容体」に結合し、エストロゲンのような働きをしてくれるのです。これにより、以下のような効果が期待できます。
- ほてり(ホットフラッシュ)などの更年期症状を和らげる
- 骨密度の低下を抑え、骨粗しょう症のリスクを低減する
- 悪玉(LDL)コレステロールを減らし、生活習慣病を予防する
- 肌の弾力を保つコラーゲンの生成をサポートする
まさに、減少していくエストロゲンの働きを補ってくれる、頼もしいサポート成分なのです。
効果の鍵を握る成分「エクオール」とは?
「大豆製品を意識して食べているのに、あまり効果を感じない…」という方がいらっしゃるかもしれません。その理由は、「エクオール」という成分を体内で作れているかどうかに関係しています。
大豆イソフラボンにはいくつかの種類がありますが、その中の一つ「ダイゼイン」が、特定の腸内細菌によって代謝されることで生まれるのが「エクオール」です。
実は、大豆イソフラボンの効果をより強く発揮するのは、このエクオールの形になってから。エクオールは、大豆イソフラボンそのものよりも、エストロゲン受容体と結合する力が強く、より効率的にエストロゲン様の働きをしてくれるのです。
しかし、このエクオールを作り出す腸内細菌を持っているかどうかは、人によって異なります。そして驚くことに、エクオールを体内で作れる日本人は、約50%、つまり2人に1人しかいないことが分かっています。さらに、若い世代では食生活の変化により、作れる人の割合がさらに減少しているとも言われています。
つまり、大豆製品を摂るだけでは、その恩恵を十分に受けられていない可能性があるのです。
あなたは作れる?作れない?まずは自分の体質を知ろう
では、自分がエクオールを作れる体質なのか、どうすれば分かるのでしょうか。これは、「ソイチェック」という郵送型の尿検査キットで簡単に調べることができます。
朝一番の尿を採取して郵送するだけで、約2週間後にはご自身がエクオールを作れているかどうか、そしてどのくらいの量を作れているかが分かります。この検査を受けることで、今後の対策が非常に立てやすくなります。
「エクオール産生能」は、現在の腸内環境を反映するものです。今は作れていなくても、今後の食生活の改善で、作れるようになる可能性も示唆されています。まずは、ご自身の現在地を知ることが、賢いインナーケアの第一歩です。
【タイプ別】エクオールの賢い摂り方&育て方
検査結果によって、推奨されるアプローチは変わってきます。
【エクオールを作れる人向け】エクオール産生菌を「育てる」食生活
エクオールを作れる能力がある方は、その腸内細菌が元気に働ける環境を整え、維持することが大切です。
- 大豆製品を継続的に摂る:
エクオールを作るためには、まず材料となる大豆イソフラボンが必要です。納豆、豆腐、豆乳、味噌など、様々な大豆製品を毎日少しずつ食事に取り入れましょう。1日の摂取目安は、納豆なら1パック、豆腐なら半丁程度です。 - 腸内細菌のエサを増やす:
エクオール産生菌も、他の善玉菌と同じように、エサがなければ元気に働けません。エサとなる「食物繊維」や「オリゴ糖」を積極的に摂りましょう。- 食物繊維が豊富な食材: ごぼう、きのこ類、海藻類、玄米や大麦などの全粒穀物
- オリゴ糖が豊富な食材: 玉ねぎ、にんにく、ねぎ、アスパラガス、バナナ
【エクオールを作れない人向け】エクオールを「直接補う」方法
エクオールを作れない体質の方は、食事だけで効果を得るのは難しいかもしれません。その場合は、エクオールそのものが配合されたサプリメントで、直接補うという選択肢が非常に有効です。
- エクオール含有サプリメントの選び方:
- エクオールの含有量を確認する: 研究では、1日に10mgのエクオールを摂取することで、更年期症状の改善効果が報告されています。まずは1日10mgを目安に選んでみましょう。
- 品質と安全性をチェックする: GMP認定工場で製造されているかなど、品質管理が徹底されている製品を選びましょう。
- 信頼できるメーカーのものを選ぶ: 長く続けるものだからこそ、実績があり、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが大切です。
食事療法の注意点
食事やサプリメントは、あくまでセルフケアの一環です。特定の食品だけを過剰に摂取するのではなく、バランスの取れた食事を基本とすることが最も重要です。また、大豆イソフラボンのサプリメントなどによる長期的な過剰摂取は推奨されていませんので、製品の目安量を守るようにしてください。
毎日の食事が、10年後のあなたを作る
更年期は、これまでの食生活を見直し、ご自身の体を内側から労る絶好の機会です。まずは、ご自身の体質を知ることから始めてみませんか?そして、大豆の力を賢く借りながら、美味しく、楽しく、この揺らぎの時期を乗り越えていきましょう。
食事の工夫をしても症状が改善しない、あるいは日常生活に支障が出るほど辛い場合は、我慢せずクリニックにご相談ください。
当院では、患者様一人ひとりの体質やライフスタイルに合わせ、食事や栄養に関するアドバイスはもちろん、専門的な治療法もご提案できます。ぜひお気軽にご相談ください。