カブトムシ

先月21日から娘の学校が夏休みとなりました。

小学校に入学してからはお互いに生活がばらばらで
なかなか相手をしてあげられなかったので
さあ、夏休みになったら何をして遊んであげようかと手ぐすね引いて待っていたのですが
妻曰く、
「猛暑で屋外の遊戯施設は自殺行為。
体験学習や小さいころからのお友達と遊んだり出かけたりする予定で
スケジュールはいっぱい。」とのこと。

そうですか。
既に子育ては父の手を離れたのね。
了解でございます。

で、その体験学習の一環として
先月末、見事なオスのカブトムシを2匹捕まえてきました。
飼育箱に入っているその2匹に娘は既に名前をつけてうれしそうにしています。

僕が小さいころは
カブトムシなんて虫かごに入れて
きゅうりやスイカの食べ残しなんかを無造作にやっておけば良かったものですが
念のため近くのペットショップに行ってたずねたところ
飼育箱の大きさや中に敷く土の敷き方とその湿らせ方、
小枝や枯れ葉の置き方に餌のやり方といった等々のご講義を一通り受け
店員さんの言われるがままに飼育セット一式のご購入となりました。

「どの位生きるものなんでしょうかね。」

これだけ投資するんです。
今日明日で死なれてしまってはやるせないと思い
店員さんに質問しました。

「うーん、どんなに頑張っても9月くらいまででしょうか。」

十分十分。
9月に夏休みが明けてまで生きていたら
どうせまた僕が世話係になるんだから。

「でも、オス同士だと喧嘩するかもしれませんね。
餌を別々に離して置いてあげたり、間に仕切りを作ったり
工夫してみてください。」

工夫・・・また仕事が増えたなあ、と思う一方
セット一式を広げて準備をする父親の姿を
わくわくした目で見つめる娘の姿を思い描きながら
猛暑の中荷物をいっぱい抱えて
人込みを掻き分け汗だくになって家路を急ぎました。

それまでより大きめの飼育ケースに土や小枝、枯葉や餌を入れ準備が整ったら
いざカブトムシのお引越し。
その一部始終を娘はそばで見ながら、
ときどき一緒になってあれこれ口をはさみながら手伝ってくれています。

うん、これこそ体験学習の一環だ。

娘の夏休みのスケジュールに父親として少し関われたことで
自己満足に浸っていました。

「あ、でもね、残念だけど9月には死んでしまうみたいだよ。
だからそのときは悲しまないでちゃんと受け止めてあげようね。」

感激屋の娘の性格を先読みし、念のためそう伝えると
「うん、大丈夫。生き物はみんないつか死んでしまうんだよね。」

そう大人びて答えた娘に
「そうだ、いつかパパもきみよりは先に死んでしまう、
だから今のうちにうんと君に関わりたいんだ。」
そう答えようとした言葉を飲み込んで
広い新居に移ってのびのびと動く2匹のカブトムシを
娘が別の部屋に行ってしまった後もいつまでも見つめていました。

翌朝
まだ妻や娘が寝ているうちにカブトムシを覗いてみると
1匹が全く動きません。
・・・死んでいます。

昨日の今日です。
さすがにショックでしたが
出勤前のばたついた中亡骸をどうするか考える余裕もなかったことから
放置したままで出勤しました。

日中はバタバタしていて母娘共々気付かなかったようですが
夜になって、まだ職場にいる僕の携帯が鳴りました。

「ぱぱ、○○○(娘の付けたカブトムシの名前)が死んじゃった!」

あとはただ号泣しながら、死んだカブトムシの背中に傷があり
もう一匹とけんかして死んだんじゃないかとしゃくりあげながら
こちらに一生懸命説明しています。

「そっか。かわいそうだけど残ったもう一匹を大切に育ててあげようね。」
「うん、かわいそうだからママと一緒に今から○○○を土に埋めてくるね。」

あとで妻から聞いたところによると、
死んでしまったカブトムシを不憫に思い
埋葬しながら一生懸命話しかけていたとのこと。

しかし翌日にはケロッといつもの元気な姿に戻っていました。

ああ、6歳なりに「死」というものを自分の中で自分なりに消化したんだなあ。
きっと今までも、こうして色々なことを消化して自分のものにしてきたんだろうなあ。

9月までには死んでしまうというもう1匹のカブトムシの死に対面したとき
夏休みで今よりは成長したはずの娘がどう対応するのか、
狭い意味での子育てというものがすでに父の手を離れてしまっているとしても
しっかりと見届けてあげなくては。
カブトムシだけではありません。
これから彼女に降りかかるあらゆることを彼女がどう消化吸収していくのか、
ひどい消化不良を起こさないよう見守りながら見届けてあげなくては。

「ところでほかの友達はカブトムシ何匹捕まえたの?」
「うん、もっとたくさん。カマキリなんかも捕まえてたよ。」

うん、カブトムシはもういいな。
カマキリも。
さっき水槽をのぞいたらグッピーと一緒に飼ってるミッキー何とかっていう熱帯魚が
また子供産んでたぞ。
消化不良を起こしそうだ。